薄明の中で(十六)
おぼろん

「エインスベルやアイソニアの騎士はともかく、エイソスまでもですか?」
フランキスの憂慮は、当を得たものであっただろう。
しかし、祭祀クーラスは動じなかった。
世界と人間との合一、そんなことをクーラスは考えていたのである。

「まずはエインスベルを殺す。その後に、アイソニアの騎士とエイソスを葬る。
 そのための算段は、今も実行しているところだ。今は、
 エインスベルの取り巻きである、盗賊ヨランを追っているところだ。
 しかし、しかるべきところからの連絡が途絶えてしまった」

「その者たちは囚われた……いいえ、殺されたということですか?」
「そうだ。エインスベルは、人を引き付ける力を未だに持っている。
 わたしが追っていた盗賊。ヨランというドワーフに関しても然りだ」

「では、わたしにそのドワーフ、ヨランを討伐せよと?」と、フランキス。
「いや、それは無駄だ。わたしは、エインスベルの取り巻きたちを見くびっていた。
 汝には、それよりも別のことに注力してもらいたい、と思っている」


自由詩 薄明の中で(十六) Copyright おぼろん 2022-09-04 02:51:20
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クールラントの詩