薄明の中で(十五)
おぼろん

「それは重い課題ですな。わたしにその任が務まりますでしょうか?
 何よりも、エイソスは今この国で誰よりも支持されております。
 アイソニアの騎士がこの国を見捨てた、そのことは良いのです。
 しかし、民を率いるというのは、己(=おのれ)を無くすということでございます」

「わたしは、最初からそうしている。この国には英雄など必要ないのだ」
「と、言いますと?」フランキスは、明らかに動揺した口調で言った。
「お前は、エインスベルと同じように、この世界を滅ぼす覚悟はあるか?」
フランキスは、恐れた。祭祀クーラスという男に対して。

「いささか飛躍が過ぎるのではないでしょうか、クーラス様」
「飛躍ではない。変化だ。お前は、わたしが今、エインスベルに劣る者だと思うか?」
「滅相もございません。あなたは、今ではクールラント一の魔導士です」

「それであれば、良いのだ。わたしは、エインスベル、そしてアイソニアの騎士、
 そして戦士エイソスも、このクールラントには必要のない者だと思っている。
 奴らは、ただこの世界に厄災をもたらすしかない者であると」


自由詩 薄明の中で(十五) Copyright おぼろん 2022-09-03 01:58:23
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クールラントの詩