妖精反応
妻咲邦香


信じれば信じるほどに、何者かから遠ざかって
投票用紙の裏側で泣いてる声にも気付かない
僕たち、とってもか弱い生き物だからさ

散歩が終わらないのは、羽根を使いたくないから
余計に時間がかかって、冷たい蕎麦が食べたい
酸っぱい果実として生きた前世が
ちょっとだけ懐かしくなって
あの頃は男の子だと言っても
ねえ信じてもらえなかったね

赤の他人じゃ辿り着けない飛び地に
僕たちだけの家を建てよう
熱中症になってもいいから
悪夢のような映画が見たい
ハロープラネット
君ジュースみたいな名前だね
ハローハロー
怒り方もジュースみたいだね

大人はからかうものだって
労働者階級らしく儚げに羽ばたいてみせる
訴訟にでもなれば我慢して書類を書くよ
アンブレラで飛べる人もいた
チョコレートと間違える人もいて
だから共通の相槌を覚えた
ミツバチがやってるのと同じだよ

絶やさぬように
増え過ぎぬように
邪魔な触覚も抜かないでそのまま
そして何も信じたくなくなって
君だけを追いかけたくなる



自由詩 妖精反応 Copyright 妻咲邦香 2022-08-31 03:30:57
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