薄明の中で(一)
おぼろん

こつこつ……
祭祀クーラスは、自室の机の天板を叩く。彼は今、一人きりである。
問題は山積みだった。このクールラントを導いていくということは、
ライランテ大陸の未来を見すえる、ということに他ならない。

──国家を象るのは単純な秩序ではない、とクーラスは思っていた。
このヨースマルテには、多くの人間、亜人、そして魔物までもが住んでいる。
(だからこそ、アースレジェ……現世をより良く導く存在が必要なのだ)
クーラスは窓の外、そして、ドアの向こう側を見すえる。

(エインスベルを排除することは、喫緊の課題だ。奴はこの世界を滅ぼす魔女……
 そして、アイソニアの騎士もどうにかして葬らねばならない。
 何か、良い方法はないのか……)

その時、彼に背後から忍び寄った者がある。フフリナ・レスペディナだった。
彼女は、祭祀クーラスの妻である。「今、お時間はおありでしょうか?」
と、フフリナは言った。クーラスは、彼女が発言を求める、ということに驚いた。


自由詩 薄明の中で(一) Copyright おぼろん 2022-08-30 00:20:48
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クールラントの詩