あまりにも長い
岡部淳太郎

あまりにも長い一日だったな
そう あまりにも長い
頭の中で 声と声が話し合う
俺は二重人格なのだ
ひとりの俺は勇猛果敢で
もうひとりの俺はあまりにもなさけない
あまりにも長い午後だな
そう あまりにも長い
今度は時間を限定してきた
一日を半分に折り畳んで まだつぶやきつづけるつもりだ
今朝の電車に乗るのはおなじみの顔ぶれで
明日もまた同じ時間の同じ車両に乗れば
同じ顔ぶれに会えるのだろうと思うと
こんな毎日が年もとらずにずっとつづいてゆくのかと思える
そんな時だ
あまりにも長い線路の上で
あまりにも長い日々のことを考えるのは
そう あまりにも長い
あまりにも長い日々なんだ
頭の中の声は
休むことなく
あまりにも長い話し合いをつづけている
こんな永遠が ありふれた落し物のように
そこらへんに転がっているなんて残酷じゃないか
たとえば俺は君となら
このあまりにも長い永遠を飛び越えることが出来るかもしれないが
困ったことに君は俺のそばにはいない
あまりにも長い距離の向こう
あまりにも長い一週間を渡らなければ会えないときている
そう あまりにも長い
あまりにも長い道なんだ
俺たちがこうやって日々をやりすごしてたどりつくには
あまりにも長い道を越えなければならないんだ
仕事帰りの電車の中
俺は読みかけの詩集の頁に眼を落とす
あまりにも長い一行を読み終えて
次の一行に移ったところだ



(二〇〇五年四月)


自由詩 あまりにも長い Copyright 岡部淳太郎 2005-05-05 07:38:58
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