どうか愛で
暗合

あのひとが僕のことをかんがえてくれている可能性はあるだろうか。あのひとはいま笑顔だろうか。きっと雨が降っている、田舎で、きみは濡れながら笑顔で、雨に打たれているのだろう。空は真っ暗で、きみは、真っ白な服を着て、だんだん空に帰ってしまうに違いない。もともと、ここはきみのいる場所ではなかった。

エアコンがよく効いている部屋では風の音ですら人工物。きっと僕も工業製品だよ。僕はもはや、自然に還ることすら許されていない。世界が存在している証拠が欲しくて、爆音で音楽を鳴らすと、僕は消えそうになる。僕という火は、きみのとこまでいけるだろうか。木も畑も山も音楽も動物もバチバチ燃やして、きみのとこまでいけるだろうか。それでもきみは僕を許してくれるだろうか。どうか愛で冷たく一撃、僕を消してくれ。


自由詩 どうか愛で Copyright 暗合 2022-08-28 21:33:32
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