ヨランの挑戦(十三)
朧月夜
「人間の体?」と、ヨランは唸った。ヨラン自身も、人間ではない。
ドワーフである。ドワーフは、この世界に産み出された、最初の異種族だと言われている。
ヨースマルテには、元は人間しか住んではいなかった。
それが、いつしか世界には魔術が誕生し、そして異種族が誕生したのである。
その遥かな歴史を、ヨランは思ってみるわけではなかった。ただ、この女、
オーマルが言ったことに、ことさらにヨランは反応したのだった。
(人間の体とは、何だ? わたしたちが、それほど人間とは異なっているということを、
この女は示したいというのだろうか? では、何のための使者だ?)
ヨランは迷う。その迷いを、アイソニアの騎士も、エイミノアも見抜けない。
「失礼ですが、あなた様。わたくしはドワーフでございます。もしや、
あなたはわたしが、この冒険の旅にふわさしくない、とお考えなのではありませんか?」
「そのようなことはない、ドワーフよ」威厳を持った口調で、オーマルは答えた。
「お前はこの世界に来た。そのこと以上に、お前の行動を証するものはない。
お前はいつか悟るであろう。この世界の真実を」オーマルの口調は、はっきりとしていた。
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クールラントの詩