キャリーバッグ
妻咲邦香
プリズムが揺れている
大きな鳥は歌わない
蔦の絡まるアーチの隙間から
覗いた街はまだ灰色で
影は薄くなると逃げる
ラズベリーみたいに生きられたらと思う
砂丘みたいなお皿の上で
食パンが目を覚ます
私もう起きている
珍しい模様の生き方なら
自慢でもしたかった
いつも引き出しが半分開いてるから
緑は少し目に痛い
躓いても今度は笑うと決めた
来ない人を待って
花が閉じる音がして
何度も訪れるアップルミントの息子たち
もう治らない癖みたいに
目線の高さを同じにしたら
グァテマラ色の夢を見る
小さいのしか持ってないけど
出来るだけ詰め込んだ
なるべくたくさん迷うように
なるべく決められないこと増やして
なるべく長めに助走をつけて
着替えの山にダイブする
掴み切れない空と肩を並べて
また一人になる