キャリーバッグ
妻咲邦香

プリズムが揺れている
大きな鳥は歌わない
蔦の絡まるアーチの隙間から
覗いた街はまだ灰色で
影は薄くなると逃げる
ラズベリーみたいに生きられたらと思う

砂丘みたいなお皿の上で
食パンが目を覚ます
私もう起きている
珍しい模様の生き方なら
自慢でもしたかった
いつも引き出しが半分開いてるから
緑は少し目に痛い
躓いても今度は笑うと決めた

来ない人を待って
花が閉じる音がして
何度も訪れるアップルミントの息子たち
もう治らない癖みたいに
目線の高さを同じにしたら
グァテマラ色の夢を見る

小さいのしか持ってないけど
出来るだけ詰め込んだ
なるべくたくさん迷うように
なるべく決められないこと増やして
なるべく長めに助走をつけて
着替えの山にダイブする

掴み切れない空と肩を並べて
また一人になる



自由詩 キャリーバッグ Copyright 妻咲邦香 2022-08-27 11:54:50
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