ヨランの挑戦(二)
朧月夜

「アイソニアの騎士よ。あなたは、幽冥界というものについて、
 あまりにもよくご存じありません」アイソニアの騎士が何事かを言い出す前に、
盗賊ヨランは、まるでみずからがリーダーでもあるかのような、
口調で言った。その物言いに対しては、エイミノアも驚く……。

「こんな盗賊に、我らは、我らの命運を賭けてしまっても良いものなのか?
 それも、エインスベルをも巻き込んで。この旅が、もしも実を結ばなかったとしたら……
 ヨラン。端的に説明せよ。ここはどこなのか?」
アイソニアの騎士は言い切って、その両手剣で大地を突いた。

そして、ヨランも息を呑む。「ここは……」皆が彼を見すえた。
「ハーレスケイドの中枢部にほど近い、メルロトーツという、神殿でしょう」
「メルロトーツ?」アイソニアの騎士が、訝しげに首を傾げる。

「はい。この世界を瓦解させた『言語崩壊』、その大災害当初から存在した、古代都市の一部なのです」
ヨランは、それまでの秘密を振り払うように言った。
アイソニアの騎士、そして、エイミノアの額に汗が流れる。「ここには、過去の世界が残っているのか?」


自由詩 ヨランの挑戦(二) Copyright 朧月夜 2022-08-22 01:42:26
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クールラントの詩