忘却の歌
メープルコート



 湖のほとりで吹く風が私に優しい。
 朝散歩に人はまばらでこの場所を占拠している気持ちになる。
 朝日を受けてキラキラと輝く湖面はまるで私の心のようで
 耳の聞こえなくなった私の唯一の癒しだ。

 自由空間の切符を手にした私。
 私はこの空間の人々を愛している。
 人目を避けて生きてきたのは過去の話。
 軽い挨拶なら誰でも出来る。

 昔聴いた音楽は私の裡に佇んでいる。
 人の記憶もあいまいに残っている。
 鮮やかなのは幼少期の記憶のみ。

 いつしか私も行くであろう黄泉の国。
 楽しかった記憶のみを携えて。
 湖のほとりで歌う忘却の歌。


 

 


自由詩 忘却の歌 Copyright メープルコート 2022-08-13 03:31:23
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