風は吹いている
ひだかたけし

風は吹いている
独りの個体がその風に乗せて
内底から溢れる声で歌う
私の生は貴女たちに負っていると

わたしは六畳の白壁の
小部屋に座り
その歌を聴く
世界に一人しかいない
この孤独な個体に戻り
熱く燃えて、冷たく醒めて
自由に解き放たれ

風は吹き続ける
意識の核を洗うように剥き出すように
優しく、時に激しく

わたしは歌と共に降りていく
静まり返った心の底へと
闇の奥へと

暴力が荒れ狂い悪魔が棲みつく
今も自分が支配されている領域を超え
光は沸き上がるだろうか
光は直観に捉えられるだろうか

私の生は貴女たちに負っていると
内底から溢れる声は歌う
天国も地獄もすべてプロセスに過ぎないと

風は吹いている
風は吹き続ける











*David.Bowie 『Reality 』へのオマージュ


自由詩 風は吹いている Copyright ひだかたけし 2022-08-12 19:43:57
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