風は吹いている
ひだかたけし
風は吹いている
独りの個体がその風に乗せて
内底から溢れる声で歌う
私の生は貴女たちに負っていると
わたしは六畳の白壁の
小部屋に座り
その歌を聴く
世界に一人しかいない
この孤独な個体に戻り
熱く燃えて、冷たく醒めて
自由に解き放たれ
風は吹き続ける
意識の核を洗うように剥き出すように
優しく、時に激しく
わたしは歌と共に降りていく
静まり返った心の底へと
闇の奥へと
暴力が荒れ狂い悪魔が棲みつく
今も自分が支配されている領域を超え
光は沸き上がるだろうか
光は直観に捉えられるだろうか
私の生は貴女たちに負っていると
内底から溢れる声は歌う
天国も地獄もすべてプロセスに過ぎないと
風は吹いている
風は吹き続ける
*David.Bowie 『Reality 』へのオマージュ