アイソニアの騎士の決断(五)
朧月夜
イリアス・ナディは、ほっと息をついた。
「それでは、あなた様は必ず、わたしの元に戻って来てくださるのですね?」
「ええ、必ずです。わたしにとって、女性と言える存在は、
今ではあなただけなのです。イリアス」アイソニアの騎士は優しく答える。
「分かりました。あなたのことを信じましょう。そして、
きっと帰って来てくださいませ。わたしのところへ。
わたしはいつまでもお待ちしております。一年でも、二年でも」
「イリアス。そんなに長くはかかりませんよ。そして、
この国に復帰した後は、この国とあなたのために、一生を捧げる覚悟です」
イリアスよりも二倍も背の高いアイソニアの騎士が、その時は小さく見えた。
(ああ、この人は本当は自信がないのだ。いや、自信などという些細なことには、
目もくれていないのだ。この人は、今、自分のなすべきことだけを考えようとしてる……)
それこそが騎士という者の姿なのだと、イリアスは幼い胸に思った。
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クールラントの詩