アイソニアの騎士の決断(四)
朧月夜
「ははは。あなたの思われることは、杞憂ですよ。
わたしは友人を救わねばならないのです。そして、
必ずあなたの元へと帰ってきます。きっとです。
そのころには……あなたはずっと大人になっているかもしれませんね」
アイソニアの騎士は破顔した。それに対して、イリアスはなおも不安に駆られた表情である。
「戦いとは、常に犠牲を伴うものなのでしょう?
それが少人数のものともあれば、なおのことです。
あなたは……」そこで、イリアスは言葉を飲み込んだ。
「わたしは、わたし自身を買い被っている、とお思いですか?」
「いいえ、そうではありません。何度も言いますが、わたくしは、
あなた様の身を案じているだけです。わたくしにとって、あなたはかけがえのない存在なのです」
「そうです。わたしにとっても、あなたは未来の妻です。
しかし、人にはやらなければならないこと、守らなくてはいけない人というものがあるのです。
あなたも、その一人なのですよ、イリアス」アイソニアの騎士は、温かな微笑をもってイリアスに応えた。
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クールラントの詩