アイソニアの騎士の決断(一)
朧月夜
「あなた様には、二日の猶予をさしあげましょう」と、ヨラン。
「いいえ、猶予などと不遜なことは申し上げますまい。
二日間の間、じっくりと考えてくださいませ。世界のことについて」
「世界だと?」アイソニアの騎士は渋面を作った。
「わたしは……」と、アイソニアの騎士は居室に帰りながら、思い惑った。
(すでに婚約者もいる身だ。エインスベルは、すでに過去の存在だ。
その彼女を救う必要が、俺にはあるのだろうか……)
それは、荒々しい問いだった。血がたぎり騒ぐ。
(俺はいつでも、戦いに身を任せて来た。そこには、エインスベルがいた時も、
いない時もあった。俺の人生は、すでに血塗られているのだ。
それが、平穏な幸福を求めても良いものだろうか?)
アイソニアの騎士は、すでに戦士としての誇りと矜持とを取り戻していたのである。
(俺を追い出したクールラントの国に一矢報いる。
そこに、何らの疚しいところがあるだろうか)次第に、その決意は固まっていった。
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クールラントの詩