マツゲのハナシ
nomica

その先で揺れる涙が醜いので、
と睫を全部抜いてしまった
そんなのは嘘である、ただ
睫まきの使い方を間違えて
ひっぱっただけだ、それだけだ
片方だけではずるいので
考えたあげくこっちも・・・
軽くなったマブタはいつもより
たくさん閉じて、考え事をする

あの先で揺れる涙は醜かった
そんなのは嘘である、ただ
涙一粒通しただけでも
見えなかったものがいきなり
よく見えるようになって少し驚いただけだ
ただ烏が物可笑しげに考え事をしたまま
こっちをみて、かぁ、といっただけだ
ゴミをあさるのは実に頭の運動で
ボケ防止になるというのも
なんだか素敵な話じゃないか

右を見て、左を見て、また
右を見て、

考え事をたくさんしていると、
いつのまにやら、しらない町に
たどり着いてしまっただけだ
帰り道は分からないけど、
北極星をたどればどこかにつくはず
涙は睫の先で揺れなかった
あくびをしたら視界をにじませて
上瞼を上手に伝って
つろろろろぽろりと目頭からこぼれた
涙は出たけれど悲しいわけではない
睫がないのは悲しい事じゃない
ただわすれものをしたことを
わすれてしまうような
そんなかんじなだけだ


自由詩 マツゲのハナシ Copyright nomica 2005-05-04 19:07:26
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