青の世界
ひだかたけし

青の世界に入る
裏返りながら
肉の痛みに耐えながら

青の世界では
虹が湧き立つ
美と哀しみの揺動
貫く霊性

僕は独り
白い部屋に佇む
舞い散る雪を思って
別離の感覚を取り戻し

青の世界を
滑走する
凍り付いて
孤独に
魂の深みに
落ちていく

手を繋いで
温かな手を握り
貴女の許へ急ぐ
この手は誰の手?
名前すら忘れてしまった

沈黙が支配する
この白い部屋に
青の世界が広がっていく
誰の声も届かない
この白い部屋に
肉の激痛に耐えながら

死の門前で
悪魔が踊る
未知なる確実な
死の門前で
悪魔が踊る

毎夜、夢をみる
家族に囲まれ
二人の子供と妻と
夕食をとりながら
俺は幸せだと
思った瞬間を

青の世界は無関心
優しく微笑みながら
虹を立て
時間を孕みながら
無言で広がっていく

かつて神々と悪魔達が戦った
悪魔達は地上に追い落とされた

すべて比喩のこの世界で
僕は病んでいる
すべて意識の振動のこの世界で
僕は魂の深みを目指す

青の世界は止まないだろう
優しく無関心な手を差し伸べて
遠い声の木霊を聴きながら
痛む脳髄を爆破しながら

今夜、
世界は柔らかく静まり返る
今夜こそ、
僕は辿り着く
魂の深みに躍る
貴女の影に

内なる貴女の影に











自由詩 青の世界 Copyright ひだかたけし 2022-08-03 20:27:54
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