無題
ryinx

あの青い森のなかで、鳥達は囁き、
微かな木漏れ日がさしこむ時、

 ふいに蝶が風に揺られ

木々から滴る水は
ぽたぽたと地面に円を描いていた。
水槽の中の海月のように、
ゆらゆらと揺れていた。

深呼吸をすると、その光景が
まるで無限の回廊のように、
迷路のように。

定まらないこころが
みることのできない出口を探していた。


口実を求め、この森の中に留まり続ける。
夜通し、森のなかを彷徨い歩き
皮膚は爛れ、血が流れ、それでも入り口を探し続けていた。

木々は深く
地に根をはり

それでもそのたくさんの樹木のなかで
音にならない声を聴いていた。


一滴の水銀をふいにおとして。
それから

 傷ついた足を引きずりながら、
 なんとか帰りつこうと、

 乾いた足跡を残して










自由詩 無題 Copyright ryinx 2022-08-02 16:55:32
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