夜行バスと世界
ひだかたけし

舞い散る雪が
街灯の明るみに
純白に晒され
夜行バス
俺の膝の上で眠る
愛娘
この幸福は
長くは続かないと
予感した

冷え切って
独りで臨む
世界は
その裸形を
剥き出しにし
無感覚に陥った俺に
優しく微笑む
その驚異を
ひた隠し
遠く疎隔され
微笑む

遠い記憶、遠い故郷
俺は
玄関口で
世界が在ることに
驚き
立ちすくんだ
その時その瞬間
光は充ちていた
光は溢れていた

今、内なる宇宙を求め
外なる自然と同質の
外なる自然と繋がり合う
内なる宇宙を求め
彷徨する、
自由になるため
記憶の麻痺の呪縛を解くため
この広大な驚異の世界に開かれるため

光は奇跡的に差す
優しい無関心に微笑む世界から
溢れ零れ落ちるように
時折、突然に
繰り返すルーティンの病んだ日常に
それは顕れる

  *

舞い散る雪が
街灯の明るみに
純白に晒され
夜行バス
俺の膝の上で眠る
愛娘
この幸福は
長くは続かないと
予感した

身体は冷え切り
意識は鮮明に覚醒し















自由詩 夜行バスと世界 Copyright ひだかたけし 2022-07-29 18:07:02
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