地下室のヨラン(四)
朧月夜
「これは魔法ではありません。火を起こす道具です。
どうです? 今は、あなた様にもこの紙片がご覧になれるでしょう?」
「うむ。しかし、分かり兼ねるな、これが何を意味しているのだ?」
エイミノアは、いくぶん冷静さを取り戻して、ヨランに尋ねた。
「この部屋は、書庫以外にも、ある部屋へと通じております。
……わたしが思うところ」ヨランがもったいぶったように言う。
「早く申せ! わたしを怒らせたいのか?」
「多分ですが、この屋敷には、ハーレスケイドへとつながる扉が存在するのです」
盗賊ヨランは、にやりと笑った。これで何度目であろうか?
エイミノアは苦々しく思う。こんな盗賊風情に、世界の成り行きなど、
任せておくわけには行かないのだと。
ヨランは、エイミノアの怒りには動じなかった。彼には彼の信念があったのである。
「エイミノア様。この屋敷から、ハーレスケイドへと赴くことが出来ます。
そして、わたしたちは、虹の魔法石を手に入れるのです」
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クールラントの詩