tile
松岡宮

tile という名の紛失防止タグが
小さな身体を四角く畳み
働きすぎ
鞄の底で 眠らないまま業務を遂行しつづける

<わたしはうたいたいだけなんです ほんとはミュージシャンだから>
ほら お腹を押すと歌が出てくる 
(「コーヒーでもいかが?」繋がっている財布が声をかける)
今夜も眠ってはいけないその薄い身体にカフェインを仕込み
歌などくちずさみながら

 はっ。
(どうしたの?)
(あ、夢だったのか)

 何か 体験したらしい

(どんな夢だったか 話してごらん)
 飛びました とりあえず。

それはユリカモメの背中を追いかけて県境の橋から身を投げる体験でした
・・・手をつなぎながら行っtile!
スマホくんと鍵束ちゃんと一緒に落下しました
さかさまになって落下する瞬間見えた夏空のあまりの青深み
 <しゃぷんっ!>
そのときわかったのです
「自傷行為はしてもよい」
水面に顔をつけたときに弾けたリビドー
わたしたち一級河川の波に揺られ
お腹を押してうたいましょう
そして海まで運ばれましょう
ごみ ごみ ごみ
あなたの乱雑な鞄の底をたゆとうtile
今夜も働きすぎ


自由詩 tile Copyright 松岡宮 2022-07-25 20:54:23
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