地下室のヨラン(二)
朧月夜
「なんだと! お前はそれを知って、黙っていたというのか?」
エイミノアの怒りは、さらに激しくなった。
「はい。わたしどもがここに捕らわれた、そに日のうちに」
「それを我に隠していたというのか!」エイミノアはさらに息まく。
「そこから、今すぐに脱出するのだ、盗賊! 早くにだ!」
エイミノアはねめつけるように、ヨランを見据える。
「まあまあ、エイミノア様。お怒りをお鎮めくださいませ。
これはきっと、オスファハン殿も知らない抜け穴なのです」
「それはどういうことか?」
「オスファハン殿が、この屋敷に引っ越してきたのは、およそ一年ほど前です。
当のオスファハン殿は、この抜け穴を知らない可能性もあるのです」
「なんだと?」エイミノアは、疑念に眉を歪ませた。
「この抜け穴は、オスファハン邸の書庫に通じておりました。
おそらく、この部屋は牢獄ではないのです」ヨランがまた微笑する。
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩