リアル
ひだかたけし
黄昏の光を受け
よろめく羽虫は
遠い木霊のなか
孤独と静謐に留まる
変わりゆくすべてに
変わらず沸き立つもの
遠く木霊する声
異様に絡み合い
広がる宇宙の輪郭を
響きのなかに伝える
独りの夜を掘り起こせ
独りの闇をくつがえせ
心の奥底に沈み込み
表層を滑り落ちていった愛
相変わらず続く病みの日常
死は緩慢に唐突に近付き
埋葬する棺を次々用意していく
羽虫は黄昏の光を受け
奇跡のように飛び立つ
自らの内に渦巻く宇宙へ
自らの深淵に眠る生々しさへ
よろめきながら、揺らめきながら
深い深い闇のなか
一閃する光に臨み
成就されぬ愛を呼び起こし