シンゾウ・アベが死んだ日
紀ノ川つかさ

今まで「アベ」と吐き捨てるように
呼び捨ててののしっていた連中も
今日ばかりは「安倍さん」になり
あらゆる暴力は許せないと嘆く
言葉の暴力の使い手達が
いっせいにその刃をしまい
自分は始めからそんなもの
使っても持ってもいなかったふりをする
シンゾウ・アベが死んだ日

彼は「極右」と言われた
本人は否定したろうが
声の大きい人達にそう言われ続けた
だから本物の「極右」が彼に期待した
憲法を変えてこの国を
強くしてくれるだろうとか
中国や韓国に喧嘩を売って
日本をアジアの王者にしてくれるだろうとか
ところが結局何もしなかったので
「極右」は裏切られたと思い
怒って銃口を向けたのではないか
そんな事件だった
シンゾウ・アベが死んだ日

僕はいつも通り仕事に行って
帰ってきた
今日は妻が外食で
子供らと僕だけの夕食だった
事件の話題が少し出た
子供らは今日は何だか寂しいと言う
こんな事件があったし……
こんな事件があったからって
シンゾウ・アベが死んだ日


自由詩 シンゾウ・アベが死んだ日 Copyright 紀ノ川つかさ 2022-07-08 21:31:02
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