オスファハンと盗賊ヨラン(十一)
おぼろん

「ハーレスケイド? そんな幽冥界の名は聞いたことがありませんが?」
「それもそのはずだ。他国の文献には載っていまい。
 ハーレスケイドは、時間が止まった冥界、とも呼ばれている」
「冥界? それは地獄ということですか?」ヨランが問う。

「それとは違うな。ハーレスケイドは人為的に作り出されたものなのだ」
「人為的と言いますと?」ヨランは訝しげに首を傾げる。
「お前がそれを知る必要はない」と、オスファハン。
「なぜなら、お前はハーレスケイドには行けないのだから」

「それはなぜですか?」ヨランは食い下がる。
「わたしがその場所を明かさないからだ。お前は、
 ヒスフェル聖国がなぜ、これほどまでに栄えてきたのか、知るまい」

「それは魔力によるものではないのですか? 他にどんな理由があるのです?」
「それは言えない。しかし、政による力の故だ、とは言っておこう」
老魔導士オスファハンは、あくまでも秘密保持の姿勢を崩さなかった。


自由詩 オスファハンと盗賊ヨラン(十一) Copyright おぼろん 2022-07-08 17:01:26
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