オスファハンと盗賊ヨラン(二)
朧月夜
エイミノアとヨランとは、オスファハン邸の壁を昇って行った。
時折、窓から中の様子が見える。そこでは、
侍従たちが始終忙しそうに立ち働いていた。
それもそのはず。オスファハンはヒスフェル聖国の筆頭魔導士なのである。
ヒスフェル聖国は宗教国家だ。魔導士が政を司っている。
国政、地方の政務、人事、そして、給与の配分なども。
オスファハンは、今も雑事に紛れていることだろう。
彼の得意とする魔法など、戦争でも起こらなければ、活用のしようがない。
「ヨラン、オスファハンの部屋は分かっているのか?」
「はい。北棟の外れにございます。今は独りでいるでしょうが、
まれに側近が同席していることがございます」
「それはまずいのではないか? やはり我々は紹介状を手にしておくべきだった」
「それではいけないのです。エイミノア様。
事がエインスベル様に関する事だと露見すれば、我々は捕縛されるでしょう」
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クールラントの詩