オスファハンと盗賊ヨラン(一)
朧月夜
盗賊ヨランと傭兵エイミノアは、
オスファハンの邸宅の前に佇んでいた。
「おい、ヨラン。オスファハンへの取次はもう済んでいるのであろうな?」
「取次ですか? そんなものが必要でしょうか?」
「何を言う。魔導士オスファハンと言えば、ヒスフェル聖国の重鎮だ。
取次もなしに会うことはできなかろう」
「そうでしょうか。わたしは盗賊ですよ。
欲しいものは何でも手に入れる、それが人脈であっても」
「ううむ。お前には何か策があるのだな?」エイミノアが尋ねる。
「策などありません。あなたは盗賊というものを誤解しております」
「誤解だと? 物事にはしきたりというものがあるのだぞ!」
「盗賊風情には、それは通用しません。すべてが自由です。
すべてが透明です。盗賊に見通せないものはないのです。
わたしには、オスファハンがわたしと会うという確信があります」
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クールラントの詩