盗賊ヨランの旅(五)
朧月夜

ヨランが魔法弾を投じる。空が割れて、幾条かの雷が閃いた。
そして、グルレッケ数頭に向かって放たれる。
「ギャッ」という声を上げて、それらグルレッケたちは倒れた。
エイミノアは唖然とする。

「魔法は、魔導士にしか使えないと、お思いですか?」
そう嘯く、ヨランの口元は歪んでいた。
エイミノアは慄然とする。そうだ、この世界では子供でも魔法が使えるのだ。
しかし、盗賊ごときにグルレッケが倒せるとは……

「今です。エイミノア殿。グルレッケの親玉に斬りかかってください」
「分かった。今……なのだな?」エイミノアはごくりと唾を飲む。
そして、数頭のグルレッケに向かって、斬りかかってゆく。

「魔法弾はこれだけではありませんよ」ヨランが冷めた口ぶりで言った。
「これごときでひるんでいては、エインスベル様の側近は務まりません」
「お前が側近だと? 笑止なことを」そういうエイミノアも、苦笑を隠せなかった。


自由詩 盗賊ヨランの旅(五) Copyright 朧月夜 2022-06-28 19:03:34
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