それとなく別れてくらす
末下りょう
なにもしようとはしないことをしようとしつづけるあなた
女のいない楽園で王を名のり その身に起きた 起こらなかったことのすべては
カラフルな電影にゆれる参道のウィンドウを行き交い
都市での死は思考でしかないかのように
何処にでもいるような何処かにいるはずの人を探し続けるわたしと消えてゆく
闇のような緑のなかの
うろ覚えな
音楽における雨のひかり
それは耳の奥の小さなすべり台をすべりおちながらはがれる
ひかりに似せたあなたの言葉を聴くことはあの人を死ぬこと
いつまでも濡れたままの皮膚に止まって動かない影に
隠されていることに隠れている
祈りがゆれる
土踏まずだけがいつも寒いわたしに雨上がりなどおとずれるわけもなく
生まれたときにはじめて死んでみせる
あなたのように
立ち止まっていたい