water-garden
ちぇりこ。
「rain」
雨、という現象が
印象派の庭です
水の詩集をさらさらとめくる雨音が
萌芽の眠りを妨げて
やわらかく湾曲してゆく
午後からのカーブを描いてゆきます
「あの人は、光を編むのが得意でした」
午後からの光は
俯いて立つ女の輪郭の
朧気なフラグメントを抽出する
沈んでゆく雨粒の名残りで訪れる
鳥たちの後ろから
羽音の言語を盗んでゆく
「あの人の顔は、覚えていません」
夕には再び雨になるという
日毎に移ろいゆく紫陽花も下生えも
白紙の頁を残して去ってゆく鳥たちも
水の底に沈んでしまった都市の
音もなく崩壊する建築群のように
無音で折り重なる
巨鯨の胃袋に呑み込まれる夜の
訪れる