小旅行
雲野しっぽ

ちょっと仕事したり
仕事してるふりしたりした
死んだふりもした
疲れた

休日は
ぼろぼろに千切れた心
両手に抱えてあの世に小旅行


骸骨のフラダンスの曲、イヤホンで聴きながら
雲を紡いだ糸でちまちまと心を縫い上げる
疑心暗鬼で真っ黒になっている心を千枚通しで締める


それからたっぷりのぬるま湯に浸そう

木々がざわめく中
物語は止まっている

湯船に浸りながら泥のように眠る
木の葉が湯船に落ちて波紋をつくる
木漏れ日が裸体をくすぐってくる


膿も栄養もなくなったし
散歩がてら心を天日干しする

うっそうと茂る藤棚のそばの
枯井戸の底を覗けば
元気に草が生えている

無人駅の跡地には何もない
優しさだけが残って


見たことのない風景を心に飾る

日が落ちてゆく
そこに悲しみはない

何もない幸せを噛みしめる


自由詩 小旅行 Copyright 雲野しっぽ 2022-06-27 23:49:14
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