空。
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町の場合、建物が壊されている間だけひろがる空
があります。ふだん見えない階段に気づく空。
カーテンがぜんぶ閉まってる、生活が、こぼれ落
ちそうです。
まだらな風がながれる水をはこぶ、雨あがりの不
透明な。背中や鰓があぶくつける。わたしも泳い
だけれど、やっぱりなれなかったさかな。
不味い大気。うすい彩衣。つま先をひらいて踵を
あわせ、はばたいてみる。飴屋で取引される。
ぱくぱく吸ってはくだけ。息の迷路。重なりひき
剥がすいのちの制度。暗がりをえらんで走る。
目をひらくと焼きつくものがあります。
目を閉じて感じるものの影があります。
瓦礫を好く人。瓦礫の寝床から見あげる場合、
空が。
空き地を好く人。予測不能な缶けりの音。夕暮れ
の場合、空が。
空があります。すき間から見る空はいつもさみし
い。通りすぎるビニール袋のかさこそ。
咥えられたねずみ。かたい火花。眼鏡の色も。
みんなさみしい。
ふくらんでゆくお腹だって切り分けられるとうふ
だって。
とおざかります。お月さんもみちてく海も。その
輪郭をぎしぎしと。
消しわすれた照明を浴びゆびで台に穴をあけます。
無人の幕間劇。
土管の空はひびきがちがう空。星あかりに浮きあ
がる。ちいさな手のひらビー玉ころころ。
テレビの奥の赤い屋根。白い戸板。どれも色あせ
た犬小屋のにおい。迷子のように。いなくなる空。



自由詩 空。 Copyright soft_machine 2022-06-24 22:33:35
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