パッケージの中でこえをひそめる小人たち
竜門勇気


僕はもう曲がっただけの道に
付き合うのは嫌になった
あるとき突然そうなってしまった
誰かと過ごすのが苦痛になったときと同じように

側溝にタイヤが取られたのがわかった
車が大きな手で揺さぶられたようだった
いつも邪魔くさかった合歓の木の枝が
フロントガラスを叩いた
しぬな、と思った

なんの役にも立たない土でできた構造物
うずたかくなった無機物の塊に不純物が混じったもの
そいつが目の前いっぱいに広がっている
カーステが鳴っていた
OUT OF STEP、どうのこうの

フロントガラスの右端が白く濁って
そこから稲妻みたいに光が走った
午前3時、まだ眠りは十分深い
囲われた枠の中でかけらがゆっくり脱落する
午前3時、不愉快な空気がそこから侵入する

すべてが同時に起こった
わずかに砕けたガラスがこめかみをさわった
合歓の木におりた露が僕の周りを舞った
世界が僕に叩きつけられた
僕は世界に叩きつけられた
クソッタレが僕にぶつかってきやがった

僕らはこの潰れた鉄の塊の中で生きていく
死んでしまうまでは
僕らはこの壊れた選択の中で終わっていく
死んでしまうまで

合歓の木の花がああいう色なのは
なにか意味があるんだ
みんなが言うような幸せについて
考える時間をくれた
この潰れた鉄の塊の中で
キャラメルがパッケージの中でささやきあうようにして



自由詩 パッケージの中でこえをひそめる小人たち Copyright 竜門勇気 2022-06-24 11:58:11
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