老衰
zenyama太郎

「おい、婆さんさっきから目を閉じたまま動かないだけど┅」
「あなた、声をかけてくださいな」
「お前かけてみろよ」
「あたし嫌ですよ。先日のようなことがあれば┅」
「先日どうしたんだよ?」
「目を閉じたまま動かないんで心配になって声をかけてゆさぶったんですよ」
「それで?」
「するとパッと目を開けてまだ生きてるよ!とおっしゃったんですよ!」
「今度こそ逝っているかもしれないからお前声をかけてみろよ」
「あなた、うれしそうに言わないでよ、あたしもう嫌です」
「しょうがないなあ!おばあちゃん!おばあちゃん!おい、母さん、母さん、母さん┅┅┅」
「おい、もう死んでるよ」


自由詩 老衰 Copyright zenyama太郎 2022-06-18 19:02:24
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