ヨガ教室
末下りょう


からだのかたいわたしには瞑想の才能もないようで 腹式呼吸と胸式呼吸のちがいもつかめず

窓ガラスから射し込む光がなんにでもなれるというわたしのからだをぼんやりとさす


かたちを変えからだを変え立たせては寝かせ
ガジュマルの葉で感じようとするときも鳩の目で見ようとするときもわたしはひとりぼっちだけれど

休日が物寂しいのも 夏が来るのも冬が来るのも 一時間歩くのに二時間かかるのも はじめて会った人が懐かしいのもなんらかの流れに守られているからで 自然はどこにでもありどこにもなく ひとつひとつとるかたちがわたしのからだの切れ端をめくってどこかにいこうとするとき わたしの手や足がわたしの目に見ることを教える


それは秘密にならないひとりきりの秘密によって始められて
見せたいもののないわたしを牽制するようにして見知らぬ過去が立ち戻ってくる

途中でとまっていることはそんなに容易なことでもなく
似ているといえば似ているし似ていなくても似ていて


かたちを変えからだを変え立たせては寝かせ
ガジュマルの葉で感じようとするときも鳩の目で見ようとするときもわたしはひとりぼっちだけれど

わたしの手や足がわたしの目に見ることをいつも教えている


目の届くところよりすこし手の届くところにあるかたちで





自由詩 ヨガ教室 Copyright 末下りょう 2022-06-18 13:47:49
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