かんむり座
佐々宝砂

初夏の夜、首が痛くなるほどに
高い空を見上げて、
あれがかんむり座だよと、
いつかそう教えたのに、

あなたは忘れてしまった。
七つの星でできた王冠を、
あっさりと投げて捨ててしまった。
あなたはつまらぬ男だ。

わたしは王冠を拾い上げて、
わたしの髪のうえにのせる。
星の王冠は空気よりもかるい。

それからわたしは、
カラス座の帆をぴんと張って、
あなたのいない大空に船出する。



未完詩集「百鬼詩集拾遺」または「続百鬼詩集」の「天体幻想」より


自由詩 かんむり座 Copyright 佐々宝砂 2005-05-03 04:58:51
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