イ行の韻律
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むかしは書けなかった恋の詞も
近頃はつかみ捕り
青い生簀に溢れんばかり

窒息しそうなAメロがあり
洒落たつもりの転調を効かせた
ブリッジの案だって豊富
不変のサビは
五年前に河原で拾った

それなのに手元に楽器がない
あっても弾けない
だったら精々
風呂に潜水しディースカウ気どり

むつかしい状況はずっと変わらない
眠りと悪夢は仲よく指をからませ
擦過傷の治りは遅くなる一方
唯一変わらないのが
爪が伸びる距離

憶えているのは、イ行の韻律

こんな唄でいいなら
今からでもきみに届ける



自由詩 イ行の韻律 Copyright soft_machine 2022-05-20 15:47:08
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