食いもんなんか食ってられるかよ
竜門勇気


最後の一本だよ
言い訳が消え失せないうちに
アルコールストーブで
タバコに火を付ける
クソでできたスフィンクス

夏のとあるときに
寒さに震える日があって
それは僕にだけ訪れる試練
精一杯頑張ったシャツを着てる日に限ってよ

最後に言い残したことが
ほんの少しだけ時間をせき止めた
おはよう、ほんとうに今日はいい日さ
そして全ては動き出す
クソでできた謎掛けが宝石みたいに見えた

一人ぼっちでもたのしいぜ
 それはマジで言ってる
一人ぼっちはさみしいよ
 それも本気で思っちゃいる
一人でいたらおかしくなりそうなんだ
 あれは嘘だ

言葉を上手に使えてれば
可愛そうなコーヒー缶を一つ救えたかもしれない
飲み口からこぼれた褐色のひと粒が
大事な手術を一つ列の後ろに回すんだ
生活が産んだゴミが
見間違えないようもないような
壊れたラジオになって
楽しくうたってる

消滅するすべてに笑いかけながら
思いの内側で旅が始まる
無茶苦茶な言葉に聞こえたと思うけど
これは誰にもわからない
うつくしい初めての経験を思って
賛美歌を口ずさんでるんだ

最後の一本だよ
臭う花びら
黴びた口枷の内側
虫けらが集まる
花束に見える
キノコの楽園に見える
アキメクラで寄ってたかって作った
最後の辞書にも見える

一人ぼっちはたのしーぜ
 よろこびなんかむなしーだけさ
一人ぼっちはたのしーぜ
 最後はきっと最後なだけさ
一人ぼっちはたのしーぜ
 最後はきっと最後はきっと

食いもんなんか食ってられない
食いもんなんか食っても



自由詩 食いもんなんか食ってられるかよ Copyright 竜門勇気 2022-05-19 13:03:12
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