夜の意識
ひだかたけし

真夜中が近づいている
ベランダに出て夜風にあたる
ゆるやかな風が吹いている
街灯の列が何処までも続く
なんて素敵な夜だろうと思う
昼間森で見た紫陽花の群落が
今頃青く光っている
風は優しく涼やか
主観と客観が溶け合い
意識は俄に広がり始め
静かに、確かに
なにかが流れ出し溢れて来る
(郷愁のようなもの、憧憬のようなもの)
何一つ欠けたものはなく
何一つ過剰なものはなく
欲望の均衡、中庸の心
はっきりした輪郭持ち
一陣の風が吹く
そうして涙は流れる
此処に在る肉身を
滔々とうっとりと濡らし
真夜中の出来を待ちわび











自由詩 夜の意識 Copyright ひだかたけし 2022-05-16 23:57:11
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