アースランテの潰走(二)
おぼろん

アースランテの撤退、それはむしろ潰走と言っても良かった。
ゴゴイス・リーゲの率いる一軍は、
密集陣形でヒスフェル聖国の軍団を突き切って行く。
その間にもヒスフェル聖国の魔導士団の攻撃は続いていた。

包囲され、殲滅される兵たちもいる。
今はまさに、「死中に活路を見出す戦術」が必要とされていたのである。
その点、ゴゴイス・リーゲには統率力があったと言って良い。
「必要な敵だけを攻撃せよ、あとは回避に努めるのだ」

「軍団長どの、もう少しでヒスフェル聖国の陣を抜けます」
ゴゴイス・リーゲの側近ヤロス・ハランが報告する。
「うむ。今、味方の兵はどれほどの数が残っているのか?」

「四万人、あるいは三万五千ほどでしょうか」
「かなりの数がやられたな。我々は敵を軽視しすぎていた……」
ゴゴイス・リーゲは悔しそうに唇を噛む。


自由詩 アースランテの潰走(二) Copyright おぼろん 2022-05-10 21:16:54
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クールラントの詩