それぞれの戦い(一)
おぼろん

エインスベルの魔法石はついに砕け散った。
魔法石は、悪しき方向に使われ続けると、消滅してしまうのである。
その様子を、オスファハンは哀れげに見つめていた。
しかし、エインスベルは違う。背嚢からクォータースタッフを取り出すと、

炎と雷撃の属性を付与していった。
「そなたは魔導士ではなく、兵士なのだな」オスファハンは言った。
「わたしはファシブルの女です。生まれた時から、兵士になることを
 運命づけられているのです」それが、エインスベルの答えだった。
 
「連合軍諸氏よ、アースランテの兵は半分ほどにまで減った。
 今は、我々と互角だと言って良いだろう。彼らはじきに退却する。
 しかし、漫然とそれを許してはならない、一兵士でも屠るのだ」

エインスベルは千人隊長のような口調で言った。そこには威厳があった。
クールラントの正魔導士という肩書。その名に恥じぬ言動だった。
オスファハンは、驚愕の目でそれを見守っていた。


自由詩 それぞれの戦い(一) Copyright おぼろん 2022-05-06 14:18:12
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クールラントの詩