右手の痣
坂本瞳子
手の甲の痣はなにを示すのか
どこかにぶつけたのか
覚えていやしないけれど
この赤紫色の小さな円形は
どうしたことか
痛みなどないけれど
なにをどうぶつけたら
こんなところにこんな色の痣が
できあがるというのか
寝ている間に動き回ってでもいるのだろうか
なにかに操られてでもいるのか
記憶が欠け落ちているのか
なんにしても不気味な話だ
痛くないからそれでいいという訳でもない
数日のうちに消えてなくなるだろうか
これはただの淡い希望だろうか
なにか大きな病気に発展していくのだろうか
不治の病ということはないだろうか
ふと不安を募らせてみたりもするけれど
なにどうせ大したことはないのだろう
ふといろんな妄想をしてみたりする
よっぽどの暇人だと自らを嘲り
人の反応を見てみたくなって
わざと手の甲の痣を見せつけるような
そんな仕草をしてみたり
それもごく自然な風を装って
いやいやまだもうちょっと
遊んでいられそうだけれども