逆さまの月
凪目

こんな時間に起きて水面を覗き込んでる
からっぽのコップに見えない水が見える
きみの水面にうつるのは
いつも何回か殺されたあとのぼく
ぼくもまたあなたを殺した
何度も
ぼくはきみの目
きみの怒りを知っている
きみの激痛と空白を
長い祈りを
ぼくはあなたの中にいる
あなたのかばうものの中に
絡めとられたかなしばりを破壊のつぼみに変えて
音のない叫びを泳いでいる
きみはぼくに名前を与えて
何度も呼んだ
呼ぶごとに
たなびいて消え失せる名前
永遠のおいかけっこ
それももう終わる
ぼくの持っている少しだけのもの
きみにわけられるすべてはここにある
からっぽの間
そこにだけ


自由詩 逆さまの月 Copyright 凪目 2022-05-06 04:01:01
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