道化師
宣井龍人
海が果てまで引いてしまった砂浜で
音が空白に吸い込まれてしまった砂浜で
命が香りを流され尽くしてしまった砂浜で
呼ばれてもいない
道化師がひとり
断絶から浮かび出る
世の中から剥がされた色を纏い
華美の崩れた醜態を晒し
まだらの息を吐きながら
じっと沈黙と対峙する
その視線は
絶望にしか届きはしない
孤独しか見るものはいない
千切れかかった手足に猶予はない
道化師は大きく生唾を飲み込む
自らの震えを振り切った今
忘却への階段を上り
意識の舞台で
最後の演技が始まる
自由詩
道化師
Copyright
宣井龍人
2022-05-05 16:30:03
縦