心配停止
イオン

「先生、人間が生きるために
 必要なものは二つあるのに
 なぜ心臓は一つだけなのですか?」
「確かに、キミなぜそんな疑問を持ったの?」
「いや、二つあれば生存率は上がるのになと」

「確かに、でも、もしかして
 人間にとって心臓は止まっても
 困らないものなのかもしれないよ」
「いや、心肺停止は困るでしょう」
「確かに、でも、心臓が止まらないから
 肺や腎臓が二つ必要なのだと考えたら?」
「そうか、逆なんですね」

「確かに、理解できたかな?」
「いや、先生、それでも心臓は
 二つあっても困らないですよ?」
「確かに、困らないが
 あっても困らないシッポは退化した
 人体はコスト管理されているんだよ」

「先生、先ほど心臓は止まっても
 困らないものだと言いましたが
 みんな死んだら困るから
 治療をしているんですよね?」
「確かに、でも心臓は止まったら
 本人はもう何もしなくていい
 困るのは残される方々でしょう
 残される方々のために
 心臓は動いていたと考えたら?」
「そうか、逆なんですね」


自由詩 心配停止 Copyright イオン 2022-04-30 18:54:08
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