嘘つき
soft_machine

嘘つき、って
世界がわたしを、そう呼ばなくなって
嘘をつくのがとてもたのしい

こころも今日も
どこまでもひろがる
わたしはピアノ
憧れの黒鍵
花火を見ている
山のはしで 海のさきで
感じるだけじゃ ものたらない気持ち
あなたの前だと一層、激しく
あふれだした ことば
唇に風、感じたいよ

めざめる空
やさしい味
色あざな血
それら標本する、魂
脳みそのいくらかの余白に居すわる
わたしが 孤独だから 
あなたの 模倣だから
ひたすら 増殖してきた
たてぶえ?
もちろん 好きだわ
気づくよりはやく
消えさってもなお
けっして鏡にうつらないこの姿を
どうしても疑えないから、嘘になる
恋が、空なのも
愛が、死なのも
みんなわたしが、真空で
いつも何かにひきよせられているのも
なぜってそれしかできない
たくさん並べたドミノは
かならず途中でくずしたいから

わたしに住む、嘘つき
このままそうすることでしか
ほんとうには近づかない
わたしは、ことば
あなたは、誰?
なみだを思いえがく人
たいくつをなつかしむ人
もう二度と消せないまなざし
嘘の中でしかうまれえないまこと

いつだったろう、最後にないたのは
こころから悲しくて
口をひきむすんで



自由詩 嘘つき Copyright soft_machine 2022-04-25 19:36:52
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