ワイジェの丘の戦い(十三)
おぼろん

いかな聖騎士フランキスと言えども、
軍団長ラジークの命令には従わなければならなかった。
「アイソニアの騎士よ、数日その首がつながったことを喜ぶんだな」
「小僧。そういうことは千人隊長になってから言うことだ」

クールラントの軍隊は、完全にアースランテの包囲陣を破った。
あとは、ラゴスとの合流地点である、アジェスの森へと向かうだけだ。
幸いなことに、アースランテの追手が迫ることはなかった。
彼らのほうでも、後陣である本隊への合流を優先させたのである。

アディアの森へは、迂回路となる東回りの街道を通った。
そこには、ユーラディアの谷と重なる部分もあった。
そして、そこで数十名の兵士たちが命を落とした。

クールラントの遠征軍で今残っているのは、一万八千人。
当初の四分の三を切る数だった。軍団長ラジークは、
己の無力を嘆いた。「せめて、逗留地だけでも変更しておけば……」


自由詩 ワイジェの丘の戦い(十三) Copyright おぼろん 2022-04-19 09:04:26
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩