ワイジェの丘の戦い(十二)
朧月夜

アイソニアの騎士とフランキスでは、その立場が違う。
アイソニアの騎士は、今ではアースランテの千人隊長である。
部下の身を守らなければならない、という使命があった。
それに対して、フランキスは単なる聖騎士の一人だった。

(ここは、出来るだけ多くの兵を守ろう。
 包囲陣はすでに崩されている。この以上の部下を亡くすのは、
 エリス・ガザンデも望んではいないだろう。
 我々は一刻も早く、先陣の隊と合流すべきだ)
 
「アイソニアの騎士よ、また逃げるのか?」フランキスはうそぶく。
「フランキスよ、一つだけ教えてやろう。
 我々の本隊が向かっているのは、ここよりさらに北の地だ」
 
「そこがお前の墓所となるのだな?」フランキスは言った。
「違うな。屍となるのはお前のほうだ。
 アースランテの兵も、この二年で相当の力をつけたのだ」


自由詩 ワイジェの丘の戦い(十二) Copyright 朧月夜 2022-04-19 09:03:43
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クールラントの詩