むじな
凪目

鏡に映る自分の顔
波になってる
とがったり、へこんだり
波は暴れ
岩壁にぶつかっては散りぢりに
無数の泡になる
泡つぶなのに貝の真似
可笑しい
悲しい
どうせなら
虎の真似
甲虫の真似、
またやってる
けむたい空想
きみ、もうやめるって約束した
うそばっかり
ぼくはうそを行き来して笑う
きみが絵の具の煮こごりを
食べるたび背中をさする
ずいぶんな厚着
それともこれが裸
服と皮膚の境目……
どこだっけ
そんなのないか
境目は深い空洞
ほらから湧く波に乗って
うずまきを泳ぐ、潜る、泳ぐ、
まだ遊ぼう
ここにいようよ
だけど、おやまあ……
きみはついに鏡のむこうを見る
波が波にぶつかってぼくは
ぱちん!
たちまちのうち消えちまいました
とさ
めでたし、めでたし
そうなりゃいいよな
鏡に映るとき
波を呼ぶとき
煙を焚くたび
笑ってる


自由詩 むじな Copyright 凪目 2022-04-16 00:05:10
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