ワイジェの丘の戦い(一)
朧月夜

しかし、事はクールラント軍の思い通りには進まなかった。
フランキスがラディアから帰還した日、
その日の夕刻には、アースランテの前衛隊が、
ワイジェの丘に対して包囲陣を敷いていたのである。

「なぜ、これほどの早さで? まさか『豹の足』
 の呪文を使っているのか?」ラジークは唸った。
『豹の足』は行軍のスピードがほぼ倍になる呪文である。
しかし、弊害も多いため、滅多に使われることはない。

丘の上に布陣している場合、包囲陣を敷かれることは、
圧倒的に不利になる。ラジークもそのことを十分心得ていた。
「さて、どこから突破するか。しかし、まずは撤収の準備だ」

クールラントの遠征軍は、アースランテの攻撃が
なるべく遅くなることを、祈るしかなかった。
「これはアイソニアの騎士の策謀なのか?」ラジークは呟いた。


自由詩 ワイジェの丘の戦い(一) Copyright 朧月夜 2022-04-15 07:12:26
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩